糖尿病の歴史(2)

前回、紀元前から糖尿病の記録がある、というお話を書きました。インドの記録が一番古いようですが、エジプトのヒエログラフにも、中国の漢方の医学書にも、糖尿病らしい記載が残っているのだそうです。(インドよりエジプトのほうが古い!という話もありますが)
昔は検査が何もできませんから、詳細な観察記録が残されているんですね。「おしっこに蟻が群がる病気」など、いろいろな記録があります。
ススルタの記録がすごいのは「糖尿病患者の尿が甘い」ことを記録していたことです。オシッコなめたんですね。。
そこから時空を超えて、1600年代のトーマス・ウィルス先生が「砂糖が入っていると思うほど甘い」と糖尿病患者さんの尿の味を記録しています。
・・・すごいですね。ぼくにはできません。
この記録から、西洋の糖尿病研究が始まるといっても過言ではありません。ウィルス先生は「ウィルスの動脈輪」で有名な先生でいらっしゃいます。ちなみに。
1700年ごろからは、血糖値や尿糖が測定できるようになります。1800年からは、動物実験が盛んになります。いろいろあるのですが・・・膵臓がとにかく謎の臓器で、西洋医学は糖尿をめぐって混迷の時代を迎えるんです。
例えば、犬の膵臓を全摘出した・・という研究があったのですが、解剖が失敗していて一部膵臓が残っていたために、糖尿病が発生しなかったのです。そのため、膵臓は糖尿病と関係ない、と結論づける先生がいたり・・
動物の脳に実験を行うと、糖尿が発生したので、糖尿病は脳の病気だ、という結論を出す先生がいたり。。
ランゲルハンス先生がたまたまスケッチで書いていた膵臓の細胞が、有名なランゲルハンス島なのですけども・・これも先生の死後になって再度認められたり・・といろいろです。
そんなこんなで、1900年になってインスリンが見つかりました。1920年に、血糖を下げる物質がインスリンと名付けられ、あれよあれよ(よもやよもやではなく)と22年には販売されたのですね。
西洋医学の混迷をみると、いかに紆余曲折があるのかがわかりますし、ススルタをはじめ歴史的な記録を残した名医たちの個人的な力では成し得なかった領域へ到達することがわかります。西洋医学は、ものすごいチーム医学なのを、つくづく感じるんです。
今回はここまでで〜